大判例

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津地方裁判所 昭和24年(行)31号 判決

原告 堀内一雄

被告 三重県知事

一、主  文

被告が別紙目録記載の土地につき昭和二十四年三月一日付買收令書(三重る第二八号)によりなした買收処分は無効であることを確認する。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、被告は原告の所有にかゝる別紙目録記載の土地を買收すべきものとし、昭和二十四年十一月四日に至り同年三月一日附のこれが買收令書を原告に送付してきたがこれより先訴外三重縣阿山郡友生村農地委員会(以下村農委と略称する)が自作農創設特別措置法(以下自創法と略称する)によりその買收計画を公示したので原告はこれに対し昭和二十四年二月二十二日異議の申立をなしたに拘らずこれに対し何等の決定もせず突然前敘買收令書を送付してきたのであつて、村農委は自創法の規定に背き原告の異議申立を顧みず從つて訴願の途を阻止し、その結果被告の前記買收令書を発するに至つたのであるから正当の手続を経ていない無効のものである。よつてこれが無効確認を求めるため本訴請求に及んだと陳述し被告の答弁事実をすべて否認し、本件買收令書は最初昭和二十四年七月三十一日原告に送達せられたが、同令書に誤つた記載がなされていたのでその訂正を村農委に申出たところ村農委において調査するといつてこれを持帰つた後更に同年十一月四日原告に再送達されたのである。從つて原告が適法に該買收令書の交付を受けたのは十一月四日と解すべきであると述べ、なお村農委議事録に原告の前敘異議申立を却下する旨の記載があるが右は昭和二十四年八月十二日以後記載せられたものであるのみでなくその理由を付さず且つ契印もないから無効である旨附陳した。(立証省略)

被告訴訟代理人は原告の訴を却下する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、答弁として、原告の主張事実中被告が原告主張の買收令書に基きその主張の農地を買收したこと、村農委が右農地の買收計画を樹立し、これを公告したところ原告が昭和二十四年二月二十二日これに対し異議の申立をしたことはいずれも認めるが、前敘買收令書は同年四月七日原告に送達せられたものであり、異議申立に対しては同年三月一日村農委で審議の結果これを却下し、同月三日村農委会長訴外矢口春山より口頭を以てその旨及び却下の理由として原告を不在地主と認めた旨原告に通達したが、原告は何等訴願の手続をしなかつたものである。原告は本訴において前敘買收令書を昭和二十四年十一月四日送付されたと主張しているが、別件の当廳昭和二十四年(行)第二五号事件では右令書を同年七月三十一日に送達せられたと主張しており、原告はこれによつて本件買收の事実を知つたのであるから、仮に原告の主張通り昭和二十四年七月三十一日に買收令書の送達があつたとしても本訴提起までに四ケ月余を経過している。而して行政廳の処分の無効確認訴訟は從來一般に行政処分取消の訴と称せられ判決においても「何々の処分はこれを取消す」と宣言せられてきたもので、本來の形成の訴としての取消の訴と同様に両者を含めて「取消」と称せられてきたのであり、終戰後施行せられた日本国憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に関する法律(昭和二十二年法律第七十五條)第八條、行政事件訴訟特例法第二、三條等、自創法第四十七條の二にいわゆる行政廳の処分の「取消」とは即ち当然無効な場合と取消の判決によつて始めてその効力を失う場合と両方の場合を含めているものである。而して原告は本訴において、被告が昭和二十四年三月一日付買收令書(三重る第二八号)による前敘農地の買收処分の無効であることの確認を求めているが、これは自創法第四十七條のいわゆる「この法律による行政廳の処分の違法なものの取消を求める訴」であつてそれ以外のものではない。ところが本件買收令書は前敘の如く昭和二十四年四月七日に送達せられたものであり、原告自ら別件で主張するところによつても同年七月三十一日送達せられたのであるから、本訴の提起は明らかに法定の出訴期間経過後になされた不適法のものであつて却下せらるべきものであると述べた。(立証省略)

三、理  由

訴外村農委が原告所有にかかる別紙目録記載の土地につき買收計画を樹立し、これを公告縱覧に供したこと、原告が昭和二十四年二月二十二日これに対し異議の申立をしたこと、被告が原告主張の買收令書に基き右土地を買收したことはいずれも当事者間に爭がない。よつて先ず右買收計画に対し原告が同年二月二十二日異議を申立てたに拘らず村農委においてこれにつき何等の決定をしなかつたかどうかにつき按ずるに、成立に爭のない甲第九号証(原告は同号証は同年八月十二日以後記載せられたものである旨主張するが証人矢口春山(第二回、但し一部)の証言により成立を認め得る甲第十号証の記載に同証言を綜合すれば村農委議事録の整理が多少遅れたことを推認することができないではないが、特に虚僞の記載ないし訂正が施されていることは認められないし、その他同号証が無効であるとの主張も亦採用できない)の記載に証人清水泰夫、同矢口春山(何れも第一回、但し一部)の各証言を綜合すれば同年三月一日村農委において右異議申立につき却下決議をなしたことが認められるが、右決定につき決定書の謄本を作成してこれを原告に送付しなかつたことは被告の自認するところであるのみでなく、成立に爭のない甲第五号証の記載に原告本人訊問の結果(第一、二回、但し第一回につき一部)を綜合すれば、原告が同年三月三日友生村役場において村農委会長矢口春山、同村長松井鉄造と面接した際矢口春山は原告に対し、村農委が一旦原告の在村地主であることを確認したに拘らず、縣事務官の指示により再審議を余儀なくせられた経緯に照し、右異議申立は村農委で必ずや却下せられるであろうし、原告が右却下決定に対し訴願をしたとしても、同様却下を免れないであろうから該異議申立はこれを撤回してはどうかと慫慂したに止まり、原告はこれを拒絶したことが認められ、右認定に牴触する証人矢口春山(第一、二回、但し第一回につき一部)、同増岡哲、同清水泰夫(第一回)、同松井鉄造の各証言部分はたやすく信用できず他に右認定を覆すに足る資料がない。果して然らば村農委は本件買收計画に対する異議申立につきこれが決定を原告に通告せず、從つて該買收計画が果して適法であるか否かに関する村農委の判断につき更に縣農地委員会に訴願をなしてこれが是正を求め得る機会を原告に與えなかつたもので、原告としてはその権利ないし利益を担保するため認められた救済手段を不法に奪われたものというべきであり、買收計画の樹立より買收令書の発布に至るまでの一連の手続中における敘上の如き瑕疵は買收処分の無効を來すものと解するのを相当とする。なお被告は行政処分の無効確認を求める訴についても出訴期間に関する規定が適用されると主張するが行政事件訴訟特例法第五條自創法第四十七條の二所定の出訴期間は行政廳の処分で違法なものゝ取消又は変更を求める訴のみに適用されるべきもので、本件の如きこれが無効確認を求める訴にあつては右規定の適用なきものと解するのが妥当である。よつて本件買收処分の無効確認を求める原告の本訴請求は爾余の点に関する判断を俟つまでもなく正当であるからこれを認容し訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 木戸和喜男 平谷新五)

(目録省略)

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